「デザインを考えないと」などと思っていて、ふと「デザインって何だ」という根底の疑問で立ち止まってしまうことがある。或る高名なデザイナーは「デザインは自然の模倣だ」と言った。私が知っているデザイナーさんは「デザインは物に付加価値を与える作業だ」と言っていた。さて。
広辞苑には第一の意義として「下絵。素描。図案。」第二として「意匠計画。生活に必要な製品を制作するにあたり、その材質・機能・技術および美的造形性などの諸要素と、生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。」と難しいことが書かれている。
要するに実際に制作する前の作業一切ということで、難解なようでもあるが1つ1つの項目を見れば、どれ1つ外せるものでないことも分かる。よく検討された説明文だ。
デザインは、ただの絵ではないという意味合いも読み取れるだろう。われわれ職人が他者からデザインをもらって制作する場合、先ず最初にデザインを感じ取る作業をする。何が言いたいのか、何が見せたいのかということだ。自分のデザインではないから、それが分からなければ依頼者の満足する制作は出来ない。絵による計画書だと思っても良い。
そういう作業を長年やっていると、他者の感性を読み取る能力に長ける反面、自分の個性というものが曖昧になる。どういうものが得意ですかと聞かれると「なんでも」と答えてしまう。何でも作れなければ商売にならないのは事実だ。
自分でデザインを考える場合でも、それは本当に自分の感性かが分からなくなる。もしかしたら以前に作ったものの感覚を模倣しているかも知れない。だから「デザインを考えないと」と思いながら、止めどなく「それは自分か」という自問を繰り返すのだ。