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頭部MRI検査

ラムゼイ・ハント症候群の病状が進み顔面の神経麻痺が始まると、顔の左右どちらか半分が自由に動かなくなる。表情が作られずだらりと弛緩した状態で、それが顔半分だから性質が悪い。まばたきもしっかり閉じられなくなるから注意していないと目が乾いてしまうし、口も半分が自由にならないから発音や食事に障害が出るようになる。

驚いたのは小鼻の変化で、人間って呼吸をするために筋肉の力で小鼻を広げているのだなということに初めて気付いた。麻痺した側の小鼻は小さく萎んでしまうのだ。片側の顔は筋肉の力で持ち上げられていて、片側は弛緩する。結果として顔が曲がるという症状になる。長く続くと弛緩した側の顔の筋肉が萎縮するから、見た目の変化も大きくなるだろう。

「これでもいいかな」と思ったのはその頃で、実際のところはそうでも思わないとやってられないというのが本音だったろう。精神的な自己防衛機能が強いから、心理的なショックは正面から受け止めずに本能的に横にかわす。自分でどうにもならないことは「まあいいや」と適当に受け流してしまう。

耳鼻科の通院でMRI検査を勧められたのは顔の麻痺が酷くなってきた頃で、脳に異常がないか検査した方が良いということだった。なんとなく「脳は大丈夫かな」と思うことも多々あったから、何か出たら嫌だなと思う反面、検査をしようがしまいが何か(腫瘍とか)有るなら同じことだと思って検査を受けることにした。

しかしまあ今どきこんな機械・・・というのがMRI検査の感想だ。磁気によって頭部の断層写真を連続的に撮影するわけだが、とにかくうるさい。振動が嘘っぽい。遊園地のアトラクションで実際には起こっていない現象を、起こっているように錯覚させるために揺らしたり音を出したりする、それのようだ。20分もの間、土管に頭を突っ込んだような状態で考えていたのは「本当に今の技術で、こんなものしか作れないのか」ということだった。子供にMRI検査を受けさせるのが大変だと聞いたことが有るが、それもそのはずだ。

脳の検査の結果は「腫瘍などは有りません」ということだった。しかし小さな脳梗塞の跡があるということで一応「神経内科も受診しましょうか」ということになった。神経内科の医者はまだ若い女性で「解らないでやってるな」という典型的な診察だった。診察のしかたに方向性がなくばらばらと思い付くことをやっている感じだ。揚げ句に「MRAを撮りましょう」と来た。今度は造影剤を使った磁気断層写真で脳の血管の状態を見るのだという。「入院はできませんか?」と言うから笑ってしまった。口に出しては言わなかったが「このまま付き合っていたら重病人に仕立て上げられてしまう」というのが本音だ。MRAも入院も断ると、苦笑いして「しびれとか出たらまた来てください」と開放してくれた。

後の耳鼻科の診察では麻痺の状態の確認をしながらの投薬で、処方されるのはメチコバール(末梢神経の働きを良くするビタミン剤)とアデホスコーワ(脳の血流を良くする・・らしい)の2種類だけになった。顔面の麻痺の進行は「ここから少し悪くなって快方に向かうと思う」ということだったが「完治する確率は50%くらいです」とも言われた。私個人の場合ということではなくラムゼイ・ハント症候群の統計データを言ったのだと思う。2週間後の診察でかなり症状が良くなった私を見て「良かった良かった」と喜んでくれたのは嬉しかった。単純に自分の見立てと処方が的を射たことを喜んだのかも知れないが、医者にはこういう部分も必要だなと感じた。

ファイル 479-1.jpgそれでもう病院に来なくて良いということになるかと思ったら「次は1ヶ月後に会いましょう」ということで、また1ヶ月分の薬を処方してくれた。半分も服用しないうちに完治してしまったから、大量に薬が余ることになった。メチコバールは問題ないのだが、アデホスコーワというのを飲むと頭痛や耳鳴り・だるさが出るようなので早々に服用をやめてしまったからだ。

結果として私の場合は発症初期に抗ウィルス薬でウィルスの働きを抑制して、その後にステロイドの集中的な投与をするという治療法が功を奏したわけだ。一時は「これはこれでいいか」と諦めたものだが、完治したなら言うことはない。さて・・そうか、と今になって気付けば、完治しなければそれを言い訳にしたかった気持ちが有ったかも知れない。言い訳ができなくなってしまったということだ。

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