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  大谷 正明(おおたに まさあき)
    (有)匠工房 代表取締役
ジュエリー制作のことや私が住む東京都武蔵村山市周辺の地域情報など

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「金工独修書」金の色上げ

ファイル 76-1.jpg

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色上げ法(「色揚げ」とも)

第一 色上げのこと

色上げ法は製品加工の最後に行う技法で、合金の表面にその主体の金属固有の色味を、薬品の作用で呼び出すものである。
たとえば純金に銀や銅を混入させた合金製品は薄黄色や銅色を帯びるので、この色上げ法が多く用いられている。昔の貨幣などは皆、純金に銀を混ぜたものを色上げしたものである。また赤銅(「しゃくどう」銅を主原料として、それに少量の金と銀を混ぜたもの)は最初から黒みを帯びているのではなく、銀四分一(「しぶいち」銅3:銀1の合金)も元々は白色ではないが色上げ法によって白色にすることが出来る。

第二 金の色上げ法

方法1

蝋(ろう)・赤ケレート(不明・鉄キレートだろうか)同量
酸化鉄(硫化鉄)・ミョウバン・緑青 以上を少量

方法2

薫陸(「くんろく」乳香=樹脂などの化石から作られる香の原料):3
硫酸銅:2
硝石(硝酸カリウム):6
硫化鉄:8
塩:10

これらの薬品を混ぜて乳鉢などで良く擦って粉にし、水を加えて泥状になったものを約1日放置する。その後この薬品を金合金の製品に薄く塗り、ゆっくりと火であぶる。薬品を塗った金属面が褐色になったら火から下ろし、水で良く洗えば黄金色になる。
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「赤ケレート」については判明しなかった。現在使われている名称で最も近いと思われたものは鉄キレート(赤色キレートとも)であったが、明治20年代にはそうしたものが普通に入手出来たとも考えにくい。何か別なものの俗称だったのだろうか。
いずれにしても「方法1」の薬品は分量も大雑把であるが、当時「色上げ」は金合金の製品には当たり前に行われていたようだから、それほど難しい技法というわけでは無かったのだろう。こちらの方法を最初に持ってきていることから、一般的に利用されていた簡易法であったとも考えられる。

「方法2」は分量が明解だ。分と匁で書かれているが、単純に比率で置き換えて有る。薫陸の効果は不明であるが、以前に読んだ別の文献の技法でも薫陸が使われていた。

ここで行われている色上げは、単なる酸化や塩化による「変色」ではない。化学反応によって金合金表面から銀や銅を析出・除去して、実際に金属表面の金の純度を高める目的で行われているのだ。それについては天保小判の電子分光分析の結果が発表されている。
金純度60%程度の天保小判が、表層付近では90%以上の純度にまでなっている。実に興味深い技法ではないか。

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